
近年、カーコーティングの主流はガラスコーティングですが、それをさらに進化させた上位グレードとして注目されているのがセラミックコーティングです。従来のガラスコーティングよりも、保護力や耐久性に優れています。
「セラミックの方が良いのは知ってるけど、実際に何がどれくらい違うのか分からない」と感じている方もいるのではないでしょうか。この記事では、セラミックコーティングとガラスコーティングの違いや選び方について、わかりやすく解説していきます。
セラミックとガラスのコーティングに明確な違いは存在しない
カーコーティングを検討するうえで、まず知っておきたいのが「セラミックコーティング」と「ガラスコーティング」に明確な違いはないということです。「ガラス素材を使っているからガラス商品」「セラミック素材を使っているからセラミック商品」と思われがちですが、実際はそう単純ではありません。
セラミックコーティングには、決まった「セラミック素材」が使われているわけではなく、耐久性や防汚性を高めるために、ガラス成分やシリカ、各種添加剤などを組み合わせた製品が多く、そうしたものが「セラミック」と呼ばれているのが現状です。つまり「ガラスコーティングの性能をさらに高めたもの」がセラミックコーティングという位置づけになります。
このように、セラミックとガラスという呼び方は、あくまで分かりやすくするためのもので、実ははっきりとした基準や決まりがあるわけではありません。各製品によって使われている素材や効果はさまざまなので、違いを理解するには、性能や仕上がりを個別に比較することが重要です。
セラミックコーティングとは膜厚と耐久性で選ばれる最上級保護コート
セラミックコーティングに使用される素材や量に明確な基準は存在しないものの、主成分にはSiO₂やシロキサン、シラザンなどが使われ、耐薬品性や耐紫外線性、耐スクラッチ性を高めています。さらに、近年ではグラフェンと呼ばれる炭素素材を取り入れた製品も登場しており、これにより耐久性や防汚性が向上しています。
ガラス商品では珍しい、セラミックコーティングならでは特徴は「重ね塗りによる被膜の厚さ」です。重ね塗りにより光沢や硬度が増すため、特に濃色車などの傷が目立ちやすい車両に適しています。この厚みのある被膜は、ガラスコーティングと比べて圧倒的な保護力と耐久性を誇り、長期間にわたって愛車の美しさを保つことができます。
このように、セラミックコーティングは、素材の選定や施工方法により、ガラスコーティングを超える性能を発揮する最上級の保護コートとして、多くの人から支持を得ています。
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ガラスコーティングとは透明感とコスパに優れたスタンダードな保護コート
ガラスコーティングは、現在カーコーティングの中で最も普及しているスタンダードな選択肢です。被膜の透明感が高く、クリアな艶を出せるのが大きな魅力で、自然な見た目を好む方に人気があります。効果の内容ではセラミックコーティングと大きな違いはありませんが、比較的リーズナブルな価格で施工できる点が特徴です。
1回の施工で十分な保護効果が得られるため、コストパフォーマンスを重視したい方や、コーティング初心者にも選ばれています。また、商品やお店によっては短時間で施工が可能なものもあり、手軽さという面でも優れています。商品の種類も多く、効果や価格面で要望に合ったものを見つけやすいことも魅力といえるでしょう。
セラミックコーティングとガラスコーティングの性能の違い
含まれている素材や濃度に違いがあり、効果は似ていてもその性能が高いセラミックコーティングですが、具体的にどれほどの違いがあるのか気になるという方もいるでしょう。ここでは、性能の項目ごとに、各コーティングの詳細について解説します。
耐薬品性能
セラミックコーティングは、酸性やアルカリ性の薬品に強く、塗装面が薬品によって劣化しにくいという特長があります。酸性雨や融雪剤など、化学的に厳しい環境下でもコーティング被膜が反応せず、安定した保護力を維持できるのが大きな利点です。
一方、ガラスコーティングはセラミックに比べ、酸やアルカリに対する耐性がやや劣ります。これは、ガラス成分(主にシリカ)が化学的に反応しやすく、長時間にわたって薬品にさらされると、被膜がわずかに劣化する可能性があるためです。
このように、薬品による影響を受けにくいという点では、セラミックコーティングがより安心といえるでしょう。特に、降雪地域や酸性雨が気になる場所で効果を発揮します。
硬度
セラミックコーティングとガラスコーティングの硬さは、「鉛筆硬度」と呼ばれる試験で測られます。これは、9H(とても硬い)から6B(とても柔らかい)までの鉛筆を使って、表面がどれだけ傷に強いかを見るものです。セラミックコーティングは、多くの製品が9Hの硬度を持っています。中には10Hと表記している商品もありますが、どのくらいの硬さかはメーカーによって違うため、製品ごとの確認が必要です。
一方で、ガラスコーティングの硬度は一般的に6H〜9Hほどとされており、セラミックに比べると少し柔らかめのものもあります。そのため、傷への強さではセラミックのほうが一歩リードしていると言えるでしょう。
防汚性
セラミックコーティングとガラスコーティングどちらにも防汚効果があり、撥水性や汚れの付きにくさに大きな差はありませんが、細かく見るといくつかの違いがあります。セラミックは被膜が厚く表面が滑らかで、泥やホコリ、鳥のフンなどが付着しにくいのが特長です。汚れても水洗いで落ちやすく、洗車の手間が減ります。撥水性も高く、水垢やウォータースポットも抑えられます。
ガラスコーティングも防汚性や撥水性に優れますが、セラミックほどの厚みや硬さがないため、表面に細かな凹凸が残りやすく、時間とともに汚れが定着しやすくなる傾向があります。とはいえ、どちらも性能は高く、防汚性に関して誰もがはっきりと違いを感じられるほどの差はありません。
持続性
セラミックコーティングとガラスコーティングでは、持続性にも違いがあります。セラミックは塗装面と分子レベルで強く結びつく性質があり、薬品や紫外線、摩耗に対して劣化しにくいのが特長です。そのため、5〜7年程度の持続が見込まれ、丁寧なメンテナンスを行えばさらに長く保つことも可能です。
一方、ガラスコーティングは無機質なガラス成分によって塗装面を覆いますが、セラミックに比べて外的要因への耐性はやや低めです。目安としては3〜5年程度とされており、定期的な手入れが前提になります。
ただ、少し話がズレるかもしれませんが、コーティングの持続性は「お手入れあってこそ」です。どれだけ高性能なセラミック商品でも、まったく洗車をせずに放置すれば1年もたないケースもあります。施工後のメンテナンス次第で効果は大きく変わるという点は、しっかり理解しておきましょう。
被膜の厚み
コーティングの被膜厚には明確な基準があるわけではなく、どのくらいの厚みになるかは商品によって大きく異なります。そのうえで一般的な傾向を挙げるなら、セラミックコーティングはおおよそ1~10μ(ミクロン)程度、ガラスコーティングは0.3~1μ程度の被膜を形成するケースが多いとされています。
この差によって大きく変わるのが、被膜の強さや安定性です。厚みのあるセラミック被膜は、長期間の摩耗や薬品などにも耐えやすく、コーティング自体の持続性にも影響します。一方で、ガラスコーティングは比較的薄いため、外的要因による摩耗にやや弱く、経年劣化が進みやすい傾向があります。製品ごとの差はあるものの、被膜の厚さは耐久性に関わる重要なポイントといえるでしょう。
光沢・艶
仕上がりの美しさで比べると、セラミックコーティングの方が深みのある艶が出やすく、高級感のある仕上がりになります。これは、被膜の厚さと構造により、光の反射に奥行きが生まれるためです。被膜が重層的に形成されるセラミックでは、より立体的な輝きが実現されます。
一方で、ガラスコーティングも透明感に優れ、ナチュラルでシャープな印象に仕上がるのが魅力です。やわらかな艶というより、澄んだ光の反射を楽しみたい方には向いているでしょう。ただし、少し話がそれますが、実は光沢に最も影響を与えるのはコーティングそのものではなく「下地処理」です。
どれだけ高価なセラミック商品でも下地が整っていなければ本来の艶は出ません。逆に、下地処理をしっかり行った安価なガラスコーティングの方が美しく見えることもあります。だからこそ、商品選びと同じくらい、下地処理の技術や経験が豊富な施工店を選ぶことが大切です。
関連記事:セラミックコーティングは専門店でこそ効果を発揮する|優良施工店の選び方と全国でおすすめの施工店
セラミックコーティングとガラスコーティングの費用と施工時間の違い
セラミックコーティングとガラスコーティングは、性能や効果だけでなく、費用や施工にかかる時間にも大きな違いがあります。ここでは、それぞれのコーティングがどれくらいの料金で、どの程度の時間を要するのかを解説します。
セラミックコーティングの費用と施工時間
セラミックコーティングは、ガラスコーティングに比べて施工が難しく、特に重ね塗りを行う場合は、塗布と乾燥の工程を繰り返すため、施工時間が長くなる傾向があります。一般的には、2泊3日程度の施工期間が必要とされています。
施工時間が長くなる分、費用も高めになります。車のサイズやボディの状態(新車か中古車か)によって異なりますが、普通車やミニバンサイズで10万~25万円、大型車で20万~35万円程度が相場です。
ガラスコーティングの費用と施工時間
ガラスコーティングは、セラミックコーティングと同様の作業内容ですが、重ね塗りがない分、施工が比較的容易で、作業時間も短く済みます。施工時間は車のサイズや状態によりますが、1日~2日程度が一般的です。
費用についても、ガラスコーティングは溶剤の価格が比較的安価で、施工時間も短いため、コストを抑えることができます。普通車やミニバンサイズで5万~20万円、大型車で15万~25万円程度が相場とされています。
セラミックコーティングとガラスコーティングの適性の違い
セラミックコーティングとガラスコーティングの違いについて解説してきましたが、性能が優れているからといって全ての人にセラミックコートが最適というわけではありません。コーティングに対して何を求めているかによって、その適性は大きく異なります。
ここでは、各コーティングの適正について解説していきますので、施工メニューを決めるうえで参考にしてみてください。
セラミックコーティングが向いている人
セラミックコーティングが向いているのは、以下のような人です。
・とにかく仕上がりや耐久性にこだわりたい人
・これまでガラスコーティングを施工してきて納得できていない人
・お手入れが得意で長く乗り続ける予定の人
・濃色車で特に線キズなどを防止したい人
セラミックコーティングは被膜が厚く、深みのある美しい艶に仕上がり、耐久性も高いため品質を最優先にしたい方に最適です。これまで複数回ガラス製品を施工してきており、品質に満足できてない人にもおすすめです。お手入れが得意で長く乗り続ける場合も、寿命の長いセラミック商品をおすすめします。
ただし、セラミックコーティングでもこまめなお手入れやメンテナンスができていなければ、効果がなくなってしまいます。お手入れが苦手な方にとっては、費用に見合った効果を実感しにくいため、あまりおすすめできません。
ガラスコーティングが向いている人
ガラスコーティングが向いているのは、以下のような人です。
・高品質な仕上がりとコストを両立させたい人
・いろいろな種類のコーティングを試してみたい人
・初めての施工で、まずは気軽に試してみたい人
ガラスコーティングは品質が高く、セラミック商品と比べて価格も抑えられているため、品質とコストのバランスを重視する方におすすめです。耐久性は3~5年程度あるため、将来的に別のコーティングに切り替える選択肢も確保できます。そのため、「まずは一度施工してみたい」「コーティングの効果を体感してみたい」といった方にも適しています。
なお、費用を最優先に考えて、まずはコーティングの感覚を掴みたいという方には、2~4万円程度で施工できるポリマーコーティングを選ぶのも一つの方法です。
コーティングだけでなくお店選びも重要
これまでコーティングごとの特徴や魅力について解説してきましたが、実際の仕上がりや品質に大きな影響を与える要素のひとつが、どのお店で施工するかという点です。というのも、コーティングの仕上がりは、溶剤を塗る前に行う下地処理の精度によってほとんどが決まると言っても過言ではなく、この下地処理には高い施工技術と専門的なノウハウが求められます。
また、作業の精度を高めるには、専用設備の有無も非常に重要です。たとえば、純水処理装置・ガスプライマー処理装置・熱乾燥装置などの設備が整っているかどうかで、最終的な艶や持続性、コーティング層の安定性に大きな差が生まれます。
特にセラミックコーティングは施工が難易度の高い作業であるため、施工経験が豊富で設備がしっかり整った専門店を選ぶことが、仕上がりと満足度を左右する最重要ポイントと言えるでしょう。
セラミックコーティングとガラスコーティングの違いに関する良くある質問
セラミックコーティングとガラスコーティングの違いについて解説してきましたが、施工メニューを決めるうえでまだまだ気になることがあるという方もいるのではないでしょうか。ここでは、各コーティングに関する良くある質問に答えていきます。
施工内容に違いはある?
コーティングによって施工内容に大きな違いが出ることは基本的にありません。ただ、セラミックコーティングは塗布と乾燥を何度か繰り返す重ね塗りを行う場合があり、この点で工程に差が出ることがあります。下地処理については基本的に同様です。
また、施工店によっては下地処理を「標準仕上げ」と「高精度仕上げ」のように分け、作業内容や料金に差をつけているケースもあります。さらに、新車など状態が良好な車両では、塗装表面のクリア層を極力削らないよう、簡易的な鏡面磨きにとどめることもあります。
見た目の艶はセラミックとガラスでどれくらい違う?
見た目の艶や光沢については、感じ方に個人差があるため一概には言えません。すべての人が明確に「どちらがどちら」と判断できるほどの差はありませんが、説明を受ければ「なるほど」と感じられる程度の違いはあります。
セラミックコーティングは、深みがありみずみずしい質感が特徴です。一方、ガラスコーティングは、すっきりとした透明感のある光沢が持ち味です。どちらも美しい仕上がりですが、艶の方向性に違いが見られます。
仕上がりの違いを実際に見て確認したい場合は、施工店に相談し、納車前の車両を見せてもらうのがおすすめです。タイミングが合えば、セラミックコーティングとガラスコーティングの仕上がりを比較できるかもしれません。
メンテナンスの手間はセラミックコートとガラスコートで変わる?
メンテナンスの手間は、基本的にコーティングの種類によって大きく変わることはありません。軽い汚れであれば水洗いで十分ですし、水洗いで落ちない汚れがある場合は手洗い洗車を行うのが一般的です。また、定期的に施工店で実施するメンテナンス作業についても、ボディの状態に応じて専用クリーナーを使用したり、トップ層を再施工したりと、基本的な内容はどちらのコーティングでも同じです。
ただし、料金については差があります。一般的に、メンテナンス費用はコーティング施工価格の1〜2割程度が目安とされているため、施工費用が高めなセラミックコーティングのほうが、相対的にメンテナンス費用も高くなる傾向があります。
関連記事:セラミックコーティングのメンテナンスを自分でする方法や注意点を解説!
DIYするならセラミックとガラスのどちらがおすすめ?
DIYでコーティングを行う場合、セラミックとガラスのどちらを選んでも作業性に大きな違いはありません。どちらの商品も、一般ユーザーでも扱いやすいように施工性を重視して改良されているためです。セラミックタイプは仕上がりの質が高い分、価格もやや高めに設定されている傾向があります。一方で、ガラスタイプはセラミックに比べて性能がやや劣るものの、その分手頃な価格で購入できます。
スプレータイプで塗り広げる形式のものは、初心者にも扱いやすく作業性に優れています。反対に、完全硬化型のコーティング剤は作業に少しコツが必要ですが、耐久性や保護性能に優れており、品質を重視する方にはおすすめです。
屋外駐車の場合はどちらを選ぶべき?
屋外駐車に適しているコーティングについては、これといった明確な正解はありません。セラミックコーティングもガラスコーティングも、いずれも屋外環境に十分耐えうる性能を備えています。
重要なのは、施工後の定期的なお手入れです。たとえ高性能なセラミックコーティングであっても、施工後に手入れをせず屋外に放置していれば、効果はすぐに低下し、結果として満足できない仕上がりになってしまう可能性があります。ガラスコーティングも同様で、日々の管理がコーティングの寿命や美観を大きく左右します。
関連記事:セラミックコーティング施工車にできた雨染みの落とし方とおすすめのアイテム
濃色車にはどちらのコーティングが向いている?
濃色車に最適なコーティングについても、これといった明確な正解があるわけではありません。ただし、深みのある艶や高級感のある光沢を楽しみたい場合には、セラミックコーティングがおすすめです。被膜が厚く、細かな線キズが目立ちにくいため、濃色ボディとの相性が良いとされています。
とはいえ、ガラスコーティングが劣っているというわけではなく、こちらも十分な艶や光沢があり、擦り傷への耐性も優れています。どちらを選ぶかは、仕上がりの好みや予算、メンテナンスのスタイルに応じて判断すると良いでしょう。
セラミックコーティングとガラスコーティングの違いを理解して最適な施工を選ぼう
セラミックコーティングは、深みのある艶と高い耐久性を持ち、仕上がりの美しさや保護性能を重視する方に適しています。対して、ガラスコーティングは価格が抑えられており、初めてコーティングを試す方や、コストと性能のバランスを重視したい方に向いています。
艶や光沢の雰囲気、耐久性、価格帯などに違いがあるため、どちらが優れているかではなく、自分の車の使い方やメンテナンスの考え方に合ったものを選ぶことが大切です。どちらにもメリット・デメリットがあるからこそ、コーティングに求める目的や使用環境に合わせて、最適な施工を見極めましょう。