カーコーティングの9Hについて
2026年4月28日
結論から申し上げますと、「9H」という数値自体は嘘ではありませんが、多くのユーザーが期待する「ダイヤモンドのような硬さ」や「絶対に傷がつかない」という意味ではないことに注意が必要です。
「9H」と謳われるカーコーティングの真実について、誤解しやすいポイントを整理しました。
- 「9H」はダイヤモンドの硬さではない
コーティングで使われる「H」という単位は、鉱物の硬さを表す「モース硬度」ではなく、「鉛筆硬度(JIS規格)」に基づいています。
- 鉛筆硬度の9H: 鉛筆の9Hの芯で引っかいても傷がつかない程度の硬さです。これはモース硬度に換算すると「4〜5」程度であり、ナイフの刃(5.5前後)よりも柔らかい数値です。
- モース硬度の9: ルビーやサファイアに相当し、ダイヤモンド(硬度10)に次ぐ硬さです。
- 混同に注意: 広告などで「最高硬度9H(=ダイヤモンドに近い)」といった印象を与える表現がありますが、実際には鉛筆の芯を基準とした評価です。
鉛筆硬度とは何か
硬さの並びはこうなっています:
6B → … → HB → F → H → 2H → … → 9H(最硬)
- 現行のJIS規格(JIS K 5600-5-4):
- 1999年に国際規格(ISO)に合わせる形で改定され、この規格に基づく正式な試験では「6B〜6H」の14段階で評価を行うのが標準となりました。
- 旧JIS規格(JIS K 5400):
- 2008年まで使われていた旧規格では、「6B〜9H」の17段階が定義されていました。
- 現在でも多くのコーティングメーカーが、より高い硬度をアピールするために、この旧規格の名残や慣習として「9H」という数値を採用し続けています。


- 施工後のボディが「9H」になるとは限らない
コーティング剤単体が「9H」の性能を持っていても、実際に車に塗った後の硬度は「下地(車の塗装)」に大きく左右されます。
- 一般的な車の塗装の硬さは「2H~4H」程度と非常に柔らかいものです。
- その上に数ミクロンという極めて薄い膜を塗っても、下地が柔らかければ強い力が加わった際に一緒に凹んでしまうため、実質的な硬度は9Hまで届かないことがほとんどです。
- 9Hのコーティング剤を9回重ねれば塗装の硬さが9Hになると謳っているところもありますが
まずありえません。
- 「9H」でも傷はつく
「9Hだから傷がつかない」と信じて洗車機に入れたり、無理にこすったりすると傷がつきます。
- 日常で付着する砂や埃(石英など)はモース硬度7程度あり、鉛筆硬度9Hよりもはるかに硬いため、簡単に傷をつけてしまいます。
- 9Hコーティングの本来のメリットは、未施工の状態(2H~4H程度)に比べて「微細なスクラッチ傷がつきにくくなる」という相対的な保護性能の向上にあります。
数値の大きさだけに惑わされず、「塗装を保護し、洗車傷を軽減するための薄い膜」として捉えるのが最も正確です。
実際のコーティング構造
SiO₂系の場合は:
- 無機ガラス骨格(硬い)
- 有機シロキサン(柔らかい)
完全なガラスではなく
「柔軟性を持ったハイブリッド膜」
プロ視点の本質
重要なのは9Hではなく:
- 密着性(剥がれないか)
- 柔軟性(割れないか)
- 膜厚(どれだけ保護するか)
硬い=良い、ではない
業界の“あるある”
- ほぼ全製品が「9H」と表記できてしまう
- 試験条件を変えれば結果も変わる
- 実際の耐傷性とは必ずしも一致しない
まとめ
「9H」の正体は
“鉛筆で引っかいても傷がつきにくい”という限定的な指標
そして本当の意味では
耐スクラッチ性能そのものを保証する数値ではない





